こんにちは。おぢぞうです。
話題のジブリ映画「君たちはどう生きるか」を観てきました!
内容を隠したまま、予告も宣伝もほとんどないままでの公開ですが、期待している映画ファンの方も多いのではないでしょうか。
で、私が観てきた感想を一言でいうと難解です。
決して夏休みに子供と一緒に観に行かないでください!
大人でも理解に苦しむ作品です。映画館を出るとき、子供さんは「全然おもしろくなかった」と残念な感想をもらしてしまうことになるでしょう。
この作品はこれまでのジブリ映画とは全く違います。エンターテイメントを求めたストーリー構成ではないのです。
では、この作品で宮﨑駿監督が何を表現したかったのでしょうか。おそらく監督自身の人生の総括です。物語を楽しんでもらうのではなく、自分が歩んできた人生の葛藤や現在の思いを吐露し、さぁ「君たちはどう生きるか」と問うているのです。
しかし、宮﨑駿監督やジブリ作品に詳しい人でないと、この作品で表現されている意味を理解するのは困難です。多くの人が「???」となるのではないでしょうか。この作品を理解するためには解説が不可欠です。
解説を受けてから、もう1度観て、ようやく楽しめる作品だと思います。
以下は、あらすじと私の解釈です。
ネタバレを含んでいますので、まだ観ていない人はここから先は読まないでください。
観終わって「???」となっている人の理解の手助けになれば幸いです。
「君たちはどう生きるか」のあらすじ
「君たちはどう生きるか」の舞台は太平洋戦争中、1940年頃の日本です。
物語の中心には、裕福な家庭で育った少年、牧 眞人(まき・まひと)の成長と心の葛藤があります。
眞人の父親は飛行機部品工場の経営者です。宮﨑駿監督の父親も航空機製作所の社長だったので、眞人は宮﨑駿監督自身なのかな。
彼は火事で母、久子を亡くし、久子の妹である夏子と再婚した父と共に久子・夏子姉妹の実家に疎開しますが、そこで悲しみや孤独、いじめといった苦難に直面します。
学校帰りにいじめにあい、自ら石で頭を傷つけ、血まみれで帰宅するというシーンがありました。
このシーンでは父にいじめっこを懲らしめてもらうためなら虚偽の行為もやってしまうという眞人の曲がった心がみえますね。
また、眞人の心には常に母の思い出があります。母の喪失によって抱える深い心の傷のため、なかなか夏子に心を開くことができません。
物語はある日、身ごもっている夏子が突然行方不明になることから新たな展開へと進みます。
ちょうどその頃、眞人は母、久子が自分宛てに残した本を発見しました。吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」というタイトルの小説で、いじめ、貧困、格差といった社会問題をテーマに書かれています。
この本を読んでから眞人の行動や態度に変化が生じたような気がします。
眞人は夏子が森に入る姿を目撃しており、彼女を探し求める決意を固めます。森の奥に立ち並ぶ不気味な塔に辿り着くと、彼はアオサギに遭遇し、異世界へと誘われます。
異世界では眞人はキリコという女漁師と出会い、彼女から異世界の仕組みや秘密を学びます。
魚の内臓が飛び出るシーンは、いままでの作品ではあまりみかけることのないグロテスクな描写でしたね。
この異世界は、現実世界の対になるもう一つの世界であり、物語の重要な鍵を握る存在として描かれています。眞人は自らの成長と母親の行方を追い求めながら、異世界の謎に迫っていきます。
物語は再びアオサギと遭遇し、夏子の居場所を知っていると告げられた眞人が、夏子を探しに行く展開へと進展します。しかしその道のりは容易ではありません。夏子のいる産屋は凶暴なインコの集団に支配され、中で謎の少女ヒミに助けられる運命にあります。ヒミは自らの過去と深い結びつきを持つキャラクターとして物語に登場し、眞人の成長に大きな影響を与えます。
ヒミは幼少期に神隠しにあっていた母、久子だったね。
夏子の元へ辿り着いた眞人は、彼女から拒絶されるという痛みを味わいます。そしてその後、異世界を創造する大叔父に出会います。
大叔父は世間がイメージする名監督・宮﨑駿のクリーンなイメージを象徴し、異世界のバランスを保つための13個の穢れのない石は、宮﨑駿監督のクリーンな作品を表しているのかな。
眞人は大叔父から「後を継いでほしい」と頼まれますが、自らの中に秘める悪意を告白し、その役割を拒否します。結果として、異世界は崩壊の危機に瀕することとなります。
無事に現世に戻った眞人は、アオサギと別れて元の生活に戻ります。物語から2年後、戦争が終わり夏子が子どもを産み、眞人は兄として成長し、一家は東京に戻る場面で物語は幕を閉じます。
「君たちはどう生きるか」を考察
宮﨑駿監督はこの作品を通じて、様々な要素を巧みに詰め込みました。主人公の眞人は、「悪意」を秘めた貴重なキャラクターとして描かれ、彼の成長と自己の葛藤が物語に深みを与えています。また、社会問題や人生についての考察も織り交ぜられています。さらに、宮﨑駿監督自身の体験や感情も混在して描かれているため、この作品の主題を感じとることが非常に難しくなっているのではないでしょうか。
異世界はスタジオジブリの象徴であり、物語はスタジオジブリの過去、現在、未来に対する監督の思いを反映しています。異世界の随所に過去の作品のセルフオマージュと思われる描写が出てきます。ジブリファンなら「ここは千と千尋の神隠しのアレだ!」「ここはナウシカのアレに似ているなぁ」といった楽しみ方もできます。
吉野源三郎の小説やジョン・コナリーの「失われたものたちの本」からの影響が大きく見られますが、あくまでも監督自身のオリジナルストーリーであり、宮﨑駿監督の内面や人生観を反映した作品です。彼の創作意欲と深い思いが込められており、その思いを読み解くことがこの映画の楽しみ方のひとつになっています。
「君たちはどう生きるか」は決してエンターテイメントを第一に考えて作られた映画ではありません。宮﨑駿監督が自己表現欲求のエゴを貫き通した作品で、まったく響かないという人も少なからずいるのではないでしょうか。子どもたちが今までのようなジブリ映画を期待して映画館に行き、残念な気持ちになることがなければいいなと危惧しています。
「君たちはどう生きるか」の主題歌と声優陣
主題歌
主題歌には米津玄師の『地球儀』が抜擢され、エンディングで流れる彼の力強い歌声と歌詞が物語のメッセージを引き立たせています。米津玄師はジブリファンとして知られ、主題歌に起用されることで彼のジブリへの熱い思いが表現されています。
声優陣
エンドロールを見て気づいたのですが、声優陣も豪華でした。
牧眞人(声優:山時聡真)
アオサギ(声優:菅田将暉)
ヒミ(声優:あいみょん)
夏子(声優:木村佳乃)
キリコ(声優:柴咲コウ)
眞人の父(声優:木村拓哉)
まとめ
『君たちはどう生きるか』は、宮﨑駿監督の手による独特な世界観と心に響くメッセージが詰まった、ジブリ作品の中でも特別な作品です。異世界の謎や眞人の成長を描きながら、宮﨑駿監督が実際の自身の経験を織り交ぜて作品に込めた深いメッセージが隠されています。難解な映画なので、良い映画かそうでないのかを判断することはできませんが、解釈論が激しく交わされる映画となるのは間違いなさそうです。
今回からミヤザキのザキが”崎”から”﨑”になったのも何か意味があるのかな?
最後までお読みいただきありがとうございました!